仕方がないこと

仕方がないこと

父親、「そんなに食べれないよ」 母親、「貴方が食べるんじゃないわよ」 父親、「誰が食べるの?」 母親、「塗装業者さんよ」 初めて家の外壁塗装をすることになった。 業者さんからは「お構いなく」と言われているらしいのだが、業者さんが食べるお茶菓子を母親は用意した。 業者さんからは「何もしなくて良い」、「家に居なくても良い」とも言われているのだが、専業主婦の母親は外に出掛ける用事がない。 外壁塗装に掛かる日数は約1ヶ月、受験を控えている私としては他人が家に来ることは憂鬱である反面、楽しみでもある。 母親、「お見えになったわよ」 外を見るとワンボックスカーから、若い職人さんが出て来た。 母親は身に着けていたエプロンを脱ぐと、鏡の前で髪を整えた。 母親が職人さんを出迎えるのに玄関を出たため、今度は私が髪を整えようと思ったのだが、髪の前で祖母が口紅を付けていた。 外壁塗装のため職人さんが家の中に入って来ることはないのだが、学校へ行くのに玄関を出ると、若い職人さんと目が合い会釈をした。 学校へ行くと、友達から若い職人さんについて根掘り葉掘り聞かれたが、会釈をしただけで何も話していない。 夕方、家に帰ると、職人さんらは既に帰った後だった。 夕食時 母親、「職人さんはイケメンばかりでしたね」 祖母、「監督さんも若くて男前だったわね」 母親、「あの監督さん、〇〇に似てませんでした?」 祖母、「似てた、似てた」 母親と祖母は、職人さんらの話題でメッチャ盛り上がっていた。 翌日の朝 母親、「お義母さん、職人さんはオニギリなんて食べないわよ」 祖母、「お菓子なんて食べないわよ」 外壁塗装2日目 若い職人さんらは、祖母が作った「オニギリ」を残さず食べた。 外壁塗装3日目 若い職人さんらは、母親が作った「おでん」を残さず食べた。 若い職人さんに食べさせるのに母親と祖母は張り切ったため、家の外壁塗装が行われた約1ヶ月間、家族が食べる食事は質素になった。

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